グレゴリ法
グレゴリ法は、コンピュターが使えない時代に生まれた歴史的に古い方法です。グレゴリ法の特徴は、次の二点です。
- A.移譲する票の選択をランダムではなく、母集団となる票に対して比例的に選択する。
- B.既に当選の確定した候補へは票の移譲を行わない。
Aは当然の要請だと思うかもしれませんが、それまでは当選者からの移譲票をランダムに選ぶという方法が取られてきた経緯があったところに、煩雑であるが説得的な方法としてグレゴリ法が登場したという事情があります。 アイルランドの下院選挙は、現在でもランダムに選ぶ方法が用いられています。
2度目以降の移譲の仕方について改良がなされてきた
2度目以降の移譲の際に、移譲する母集団の定め方によって、さまざまなバージョンがあります。
- 1.直近に移譲された票のみを母集団とする。(オリジナルのグレゴリ法)
- 2.現在持っている票を母集団とする。ただし、移譲する票の原本に付された重みは一旦消去して、母集団の票すべてに同じ重みを付す。(包括グレゴリ法)
- 3.現在持っている票を母集団とする。ただし、移譲する票の原本に付された重みは消去せず、母集団の票すべてに同じ重みを掛けることで、重みを更新していく。(重み付き包括グレゴリ法)
現在は、3 の重み付き包括グレゴリ法が最も好まれています。
票の移譲順序が問題になる I
グレゴリ法では、当選決定者にも落選決定者にも票は移譲されません。したがって、各候補からの票の移譲は一度かぎりです。票の移譲回数は、たかだか候補者の人数分ですので、実際の票の原本を用いて手作業で当選者を決定するのには、大変便利です。コンピューターの普及以前はこの方法は好まれました。
ただし、そのかわり、複数の候補者が同時に余剰票をもったとき、どの順序によって票の移譲を行うのかによって、最終的な当選者が変わってしまいます。このことがグレゴリ法に票の移譲する順番を決めなければならないという煩雑さをもたらすことになります。
票の移譲順序が問題になる II
たいていの場合、余剰が最も大きい候補の票から先に移譲する方法がとられています。しかし、この順序で決めることについて、説得的な説明はなされていません。さらに、候補からの移譲を一括して行った後では、「余剰が次に大きい候補」が変化するので、法律はこの点についても定めが必要になります。この定めについても説得的な説明はなされていません。
動画で学ぶ
次の動画は、グレゴリ法の説明です。
票の移譲順序が問題になる III
Wright法は、重みつき包括グレゴリ法とほぼ同じです。しかし、通常のグレゴリ法では票の移譲は不可逆的に進行する一方、Wright法では、落選者決定後に落選者がそもそもいなかったかのようにして、最初から集計をやり直します。このようにすると、余剰が大きい候補が変化することがあるので最終結果が変わってくるという訳です。
ただし、この方法は、落選者が決まるたびに、(一人少ない人数で)集計をやり直すにことになるので、票の移譲回数が増加します。