単記移譲式投票の利点
単記移譲式は、有権者に候補者を直接選ぶ権利を保障し、無駄な票を移譲することによって比例代表を達成する方法です。
候補者調整や事前情報に関わらずに、死票が少なくなることが保証されているので、選挙において政党の関係者やメディア関係者への権力の集中を抑制し、政治を有権者の手に取り戻すことが期待されます。
日本では、少なくない人達が、社会的・経済的な理由で、自由に政治的な意見を表明したり、政治活動をすることができないと感じています。秘密投票は、政治参加に不自由を感じる人びとが政治に参加するための重要なしくみであり、なかでも単記移譲式は有権者の意思を最大限活かそうとする選挙方法です。
有権者が候補者を直接的に選ぶ
「政党」ではなく「人」を選ぶ
この制度は、有権者に直接候補者を選ぶ権利を保障します。
政党の枠組みが、有権者の思いとすれ違うような状況でも、有権者に政策の選択肢を与えます。また、有権者に、人物を吟味する権利を与えます。
人物を選べない制度では...
候補者を直接的に選ぶ制度は政策本位ではないと批判されてきました。
しかし、政党が有権者の考える政策メニューを提示できるとは限りません。また、有権者が選挙で候補者を直接を選ばなければ、人物の選定をするのは既得権を持つ一部の政党関係者です。
単記移譲式は、政党関係者への権力集中を抑制し、政治を有権者の手に取り戻します。
死票になることを恐れずに安心して投票
単記移譲式は、落選者の票および、当選者の余分な票は移譲されます。
したがって、有権者は自分の票が死票になることをおそれずに、安心して投票することができます。
候補者調整の必要がない
単記移譲式は、同士討ちも共倒れも生じない選挙制度です。したがって、投票する前から、候補者調整をする必要性が低下します。
候補者調整は、有権者の意見を聞く前から、一部の人の判断で有権者の選択肢を狭める行為です。
多数の候補者を吟味できる
単記移譲式は当選者が複数いるので、候補者もある程度多数になります。また候補者調整の必要性が小さいので、「挑戦」する候補者もある程度期待できます。 その結果、有権者にはある程度の多様な選択肢が与えられます。
有権者に選択肢が増える制度を、一部の人は、「有権者に情報コストがかかりすぎる」と言って反対します。しかし、有権者には、自分をとりまく社会の将来について考えて投票する権利があります。有権者の情報コストが最小になる制度は、独裁政治です。
情勢調査・事前情報に振り回されずに投票
単記移譲式においては、「勝てそうな候補は誰か」「竸っている候補は誰か」といった事前予測に、右往左往する必要がありません。
その結果、メディアによる事前予測の役割は低下して、有権者一人ひとりが政策や人物について落ち着いて考えて投票する権利が尊重されます。
開票結果に有権者の「考え」が反映される
単記移譲式の開票結果は、他の方法に比べて、有権者の「考え」を丁寧に反映します。
有権者は死票になることを恐れずに投票するので、第一順位の集計には、有権者達達の素直な意見が反映しやすくなります。
また、票の移譲過程は、有権者達の意見が譲歩されていく過程を表現します。
票の移譲がない制度では、有権者達の「素直な一票」も「苦渋の一票」も区別されません。
比例代表を自然に実現
単記移譲式は、多数の人には多数の当選人、少数の人には少数の当選人を自動的に保障します。この考えを比例代表と呼びます。
単記移譲式は、「政党」を超えたグループに対しても、比例性を保障しています。
比例代表は少数を尊重して多数を無視する考えではありません。結び付きの強固な少数派集団が、議会内で絶対多数を占めて必要以上実権を握ることを防止する考え方です。
区割りの柔軟性
単記移譲式は、一つの選挙区で複数の当選者を出すことのできる選挙方法です。
したがって、無理に細かい選挙区をつくる必要がありません。選挙区の定数をある程度変動させることが許容されるので、人口が変動するたびに区割りのやり直しをする必要性も低下します。
説得的なアイディア
単記移譲式は、1.比較的得票数の多い候補を当選させる 2.無駄な票をできるだけ移譲する という単純で納得しやすい原則で当選者を決定します。
したがって、有権者にとって、わかりやすく納得しやすい選挙方法です。